元葬儀屋が正直に話す|親が元気なうちに『やっておくと本当に助かる』準備

終活・葬儀

「まだ元気だし、そんな話は早いかな」

親のことを考えたとき、多くの人がそう思って先延ばしにします。私も、もし逆の立場ならきっと同じことを思うでしょう。

ただ、私は葬儀の仕事に20年たずさわってきました。その中で、「準備していたご家族」と「していなかったご家族」の差を、数えきれないほど見てきました。

その差は、決してお金のあるなしではありません。ほんの少し、元気なうちに話しておいたかどうか。ただそれだけで、いざというときのご家族の負担は、まったく違うものになります。

この記事では、脅かすためではなく、あなたと親御さんが少しでもラクになるように、現場で見てきたことを正直にお伝えします。

葬儀の現場で見た「準備していなかった家族」に起きること

人が亡くなると、悲しむ間もなく、次々と決断を迫られます。実際の現場で、多くのご家族が戸惑っていた場面を2つ紹介します。

「どこに安置しますか?」——最初に迫られる決断

亡くなった後、ご遺体をどこにお預かりするか。これを、その場で決めなければなりません。

私のいた地域は田舎だったこともあり、昔は自宅にお連れするのが当たり前でした。ただ近年は、葬祭ホールへ直接安置される方も増えています。特に、家族葬を選ばれる方に多い印象でした。

問題は、自宅安置を選んだのに、その部屋の準備ができていなかったご家族です。

あるお宅では、私が病院までお迎えに上がり、ご自宅に到着してから、ご家族が慌てて安置するお部屋を片付け始めました。到着してから1時間ほど、私もお手伝いしながら、一緒にお部屋を整えたことを今でも覚えています。

悲しみで頭が真っ白な中、掃除をしなければならない。これは、想像以上につらいものです。

「これで十分でしょうか?」——祭壇のランクで迷う

祭壇にも、いくつかの段階があります。私のいたところでは、大きく3つに分かれていました。

  • 一番下:造花の祭壇
  • 真ん中:生花と造花を組み合わせた祭壇
  • 一番上:生花の祭壇

もちろん、段階が上がるほど金額も変わります。

これを、深い悲しみの中で、しかも限られた時間で選ばなければなりません。事前に故人やご家族の希望を話し合っていないと、「安いものを選んで、後で後悔しないだろうか」「見栄を張って高いものにしていないか」と、多くの方が迷われます。

「これで十分でしょうか」——そう聞かれることは、本当によくありました。

そんなとき私は、いつも「それでいいと思いますよ」とお答えしていました。祭壇の段階は、故人への想いの大きさとは関係ありません。ご家族が納得できるかたちであれば、それが一番なのです。

元気なうちにやっておくと、本当に助かる3つのこと

では、何を準備しておけばいいのか。難しいことは必要ありません。元気なうちに、たった一度話しておくだけで十分です。

1. 希望を一度だけ話しておく

「どんなお葬式にしたいか」を、一度だけでいいので聞いておきましょう。

  • 宗派やお寺との付き合いはあるか
  • 大人数で送りたいか、家族だけで静かに送りたいか
  • 誰に知らせてほしいか

これを聞いておくだけで、いざというときに「本人はどうしたかっただろう」と悩まずに済みます。

2. 葬儀社の相場を「今のうちに」知っておく

急なときは、比較する余裕がありません。だからこそ、元気な今のうちに、だいたいの費用感を知っておくことが大きな安心につながります。

相場を知らないまま慌てて決めると、後になって「もっと落ち着いて選べばよかった」と感じる方が少なくありませんでした。

3. エンディングノートに最低限だけ書いてもらう

すべてを完璧に書く必要はありません。連絡してほしい人、加入している保険、お墓のこと。この最低限だけでも書いてあれば、残されたご家族は本当に助かります。

なぜ「事前の資料請求」が一番ラクなのか

3つの準備の中でも、特に効果が大きいのが「事前に葬儀社の資料を取り寄せておくこと」です。

急なときは、悲しみと段取りに追われて、複数の葬儀社を落ち着いて比べることはまずできません。結果として、最初に案内された葬儀社の言い値で決めてしまう。これが、現場で一番よく見た光景でした。

一方で、元気なうちに数社の資料を取り寄せておいたご家族は、費用の目安が分かっているぶん、いざというときも冷静に選べていました。お金の面でも、段取りの面でも、明らかに余裕があったのです。

今は、複数の葬儀社の資料を無料でまとめて取り寄せられるサービスがあります。しつこい勧誘もなく、費用の比較ができるので、「まだ早いかな」と思う今こそ、取り寄せておくのに一番いいタイミングです。

親に「葬儀の話」を切り出すのは気が引けても、まず自分が資料を眺めて相場を知っておくだけでも、いざというときの安心感はまったく違います。

まとめ

準備をすることは、「縁起でもない」ことではありません。むしろ、親を大切に想うからこその行動だと、私は20年の現場を通して感じてきました。

  • 亡くなった後は、悲しむ間もなく次々と決断を迫られる
  • 元気なうちに「希望を一度話す」「相場を知る」「最低限を書き残す」だけで、負担は大きく減る
  • 特に、事前の資料請求は今すぐできて、一番効果が大きい

あの日、ご家族と一緒にお部屋を片付けた1時間を思い出すたび、「もし少しだけ準備があれば、この方たちはもっと穏やかにお別れできたかもしれない」と思います。

この記事が、あなたと親御さんの「もしものとき」を、少しでも穏やかなものにできれば幸いです。

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